「ねぇ、花織ちゃん。」
花織ちゃんは、弾かれたように顔を上げると、元から大きな目を更に大きく見開いて、キュッと眉を寄せた。
その瞳は、少し潤んでいる。
「そんな恋をしていて、本当に幸せ?」
私がそう聞くと花織ちゃんは、何かを考えるように瞳を動かす。
そして、また私に視線を戻すと、
眉を八の字にして、とても柔らかな笑顔で、
「うん!幸せ!」
そう言った。
「正直な話、少し辛い時もあるよ?だけど、それ以上に、先生の唯一でいられる事が嬉しい。昨日話したでしょ?沢山沢山追いかけて、やっと想いが通じたって。それだけでね、私にとっては何事にも代えられない奇跡なの」
花織ちゃんは、まるで幸せを噛み締めるかのように瞳を閉じてそう言う。
「それだけで、どんなに辛い事も乗り越えられる。私ね、先生と出会ってから凄く強くなったんだ!受験勉強だって、前よりもずっとずっと頑張ろうと思える」
「翠ちゃん」と言って、花織ちゃんは私の顔を覗き込む。
そして…
「私は、とっても幸せだよ!」
その言葉の通り、とても幸せそうに、
最高の笑顔で笑って見せた。



