先生。あなたはバカですか?

「だから俺は、お前に気付いて欲しいんだよ。お前の道の脇にも色んな花が咲いてるんだってこと」


「多少荒療治になってもな」と言って、先生は微笑みながら、私の頭の上に乗せた手をポンポンっと動かした。


「…だけど私は、その道から一人で逸れていく勇気なんてありません…」


そう。


私は勇気がないんだ。


真面目にお母さんの言われた通りに生きていれば、少なくともお母さんに嫌われる事はない。


例えつまずいたとしても、“言われたと通りにはしたのだから”と、まだ言い訳ができる。


お父さんと重ねられ、嫌な顔をされる事もない。


お母さんを悲しませる事もないんだ。


「だから、何でそうなる」


「え?」


「誰も一人でしろとは言ってねぇだろ。

……俺がいるだろうが」


「…先生が?」


「前からそう言ってる。

俺がどんな道でも付き合ってやるっつの。
お前が一人で歩けるその時までな」


花織ちゃんと峰山先生も、そういう事なのだろうか。