次に先生は、その花に向けて伸びる細い道を書く。
「自分の気に入った花を見付けた奴は、道を逸れてその花に向けての道を作る。各々がみんな今度は別々の道を歩き出すんだ。
これは、最初の一本道を歩いてる奴らからしたら道を逸れてる事になるわけだから、何やってんだって思うかもしれないな。だけど、俺はそうは思わない。綺麗な物や興味を持った物に手を伸ばすのは当たり前の事だし、そこに自分の道を作るというのなら大いに結構。ただし、どんな道になるかは自己責任だけどな」
先生の書いた棒人間が、わらわらと違う道に進んでいく。
「もちろんこの先の道に何があるかなんて分からねぇよ?だけど、何もないただの一本道を進むより、得るものはずっとでかい」
棒人間が花のような物を掲げ、その上に“GET!”と書いた所で、先生はペンを置いた。
「前にも言っただろ?お前が明日死ぬとして、お前の中に何が残るかって。
俺はお前に、最後に何も残らないような人間にはなって欲しくないと思ってる」
目を細めた先生は、私の頭にそっと手を乗せた。



