先生。あなたはバカですか?

この人と出逢ってから、どうも真面目という言葉がカンに触る。


真面目の何がいけないっていうのよ。


「なぁ。お前の思う真面目ってなに?」


「え?」


「お前の世界はさ一本道なんだよな。そこの道から逸れた奴は、みんな不真面目なんだ」


確かに私の中にはルールや常識で縛られた一本の道がある。


そこから飛び出せば、きっとお母さんの言うお父さんのようになってしまうから、私は常にその上を歩き続けている。


だってお母さんを悲しませたくないもの。


真面目に勉強をして、お母さんの言う大学に入って、ハメを外す事なく生きていけば、きっといつかお母さんは信じてくれるだろう。


私は、お父さんとは違うのだと。


「でもさ、人生そんな楽な道だけじゃねぇぞ?その一本道を歩くなんて、誰だって出来ると思わねぇ?」


「楽…ですか」


「そう。お前の言う真面目の道は、ルールや常識が守ってくれる、一番リスクの少ない楽な道だ」


先生は眼前にビシッと人差し指を立て、そう宣言するけれど、私にはイマイチピンとこなくて訝しげな表情を作る。