「そうか?少なくとも川島に対して、俺よりは心開いてたと思うけど」
先生は少し拗ねた表情でそう言うと、再び大きな溜息と共に首を垂れた。
「俺、なにガキ相手に嫉妬なんかしてるんだよな。情けねぇ…」
いつもの先生からは想像の出来ない、少し弱ったその姿を、
私はちょっとだけ、可愛いと思ってしまった。
何だそうか…。
昼間のあの態度は、ヤキモチを妬いてのね。
そうか…。
胸の奥にじんわりとした温かいものが広がっていく。
「…で?」
「はい?」
「俺の事はいいから、お前はどうしたんだよ」
「…あ…」
またさっきの出来事を思い出せば、襲ってくる何とも苦い気持ち。
話してもいい事なのだろうか?
先生と生徒の恋愛なんて、学校や保護者に知れたら2人共きっとただじゃ済まない。
峰山先生は教師を首になるだろうし、花織ちゃんに至っては、受験に支障が出るはず。
まぁ、自業自得といえば、そうなんだけど…。
この男も私に交際を迫ってくるバカ者だし、例え2人の事を話した所で悪いようにはされないだろうけど…。



