「ほれ。」


「…あ」


先生の鞄の中から出て来たのは、昨日屋上まで持参した参考書。


「お前、昨日忘れて行っただろ」



そう…。


あなたへ怒りのせいで、拾うのをすっかり忘れていたのよ。


家に帰ってから気が付いて、凄く焦ったんだから。



まぁ、でも一応、わざわざ渡しに来てくれたわけだし、ここは素直に…


「ありがとうございます。」


そう感謝を述べて、受け取ろうとした。



…が、その手は本ではなく空を掴んだだけ。



えーとこれは…


どういうことかしら?



「…返してください」



「やだ。」


先生は、ニヤニヤしながら私が取ることの出来ないように参考書を高く掲げる。


高身長の彼に対して、若干157cmしかない私の身長。


背伸びをした所で、届くはずもなく…。



イッラ〜…



この顔を見ているとじわじわと怒りが込み上げてくる。



いけないわ。


ここで取り乱したら彼の思う壺よ。


耐えるのよ私っ。