先生。あなたはバカですか?



幸い今日は満月だ。


仄かな月明かりが行く先を照らしてくれている。

「夜の海って初めて…」


黒い波が打ち寄せては引いていく様子は、昼間見た海とは違って少し不気味だ。


何だかその闇に吸い込まれてしまいそうで、少し怖くなる。


「…やっぱり戻ろう」


そう踵を返すと、ふと誰かが会話しているような声が聞こえてきて、私はその足を止めた。


辺りを見回すと、行こうとしていた方向に何やら人らしき影が2つ浮かび上がってくる。



うちの生徒かしら?



月明かりだけではよく見えないけれど、なんとなく男女のやり取りのような声が聞こえてくる。


「まだ…一緒に居たいです」


「うん。俺もだよ…」


でも、その声はどこか聞き覚えのある声で…


“まさか”と思った時にはもう遅く、目の前に浮かび上がったその光景に私は自分の目を疑った。



そこには、さっき部屋を出て行った時の服装とは違う、部屋着姿の花織ちゃんと…


「峰山…先生?」



え…。


これって一体…どういう事?




2人はどこからどう見ても、抱き合っている。