先生。あなたはバカですか?

肩を掴んでいた先生の手を思い切り振り払うと、我慢しきれなかったものが頬を伝って地面に落ちる。


「あなたの側にいると、辛いし苦しいのっ!!今だって…何でこんな気持ちにさせるのっ!?」


傷付けると分かっているのに、溢れてくる想いは止まらない。


私が苦しいように、この人も苦しくなればいいと思う。


そんな酷い考えを持っている自分にも、酷く嫌気がさした。


「あなたと居たって笑えないっ!!!私は絶対に笑わないっ!!!

もうお願いだから私に…構わないでっ!!!」



そう叫んで、彼の顔も見ずに走り去る。



彼の事だから追いかけてくるかもしれない。


なんて思いながら走っている自分が、気持ちとは裏腹にまるで期待しているようで嫌だった。


“構わないで”


そう言った気持ちは嘘じゃないのに、どこか胸の奥の方でズキズキと鈍い痛みを伴って。


でも私は、それに気付かないように息が切れても走り続けた。



宿に着くと、漸く足を止める。


汗なのか涙なのか、もう分からなくなった雫を拭いながらそっと後ろを振り返る。



だけど、追いかけてくる先生の姿は、どこにもなかった––––。