–––そう、思ったのに…。
「よぉ。生田スイ」
「………」
翌朝。
私の下駄箱の前で腕組みをしながら待っていたのは、昨日の不良教師。
「おい。あからさまに嫌そうな顔してんじゃねーよ」
嫌な顔をするなって方が無理だと思うのだけど…。
この教師、下駄箱の前に立っているというだけで無駄に目立っている。
登校して来る沢山の女生徒達が、
「がんちゃんおはよー!」
だとか、
「がんちゃん何してるのー?」
だとか、
「がんちゃん今日もかっこいいねー!」
だとか言いながら、私達の横を過ぎて行くものだから、
私は身を隠したいような、とてつもなく居心地の悪い感覚に襲われる。
その一つ一つに、ヒラヒラと手を振って笑顔で応える“がんちゃん”…もとい、岩田先生は、
そんな私の気持ちになんて、さらさら気付いてはいないのだろう。
「無視するなよ。生田スイ」
そんな彼を無視して、下駄箱から上履きを取り出していると、
先生は、わざと私の視界に入るように横からヒョコッと顔を出してくる。



