「無理はするな…ね」
私は、先生の背中を見送りながら小さな声でそう呟く。
昔から私は、時々ああした顔を向けられる事がある。
まるで、可哀想なものでも見るかの
ように、哀れむような瞳を向けて、
皆口を揃えて、私に“頑張り過ぎるな”と言う。
なぜなのかは分からない。
ただきっと彼らから見ると私は、“頑張り過ぎていて可哀想な子”なのだろう。
自分では全くそんな事は思わない。
親の期待に応えるように頑張るのは当然でしょう?
進路は自分で決めるもの?
親とよく話し合って決めるもの?
何よそんな綺麗事。
親がそうしろと言うから、そうする。
今までずっとそうしてきた。
それの何が可笑しいの?
当たり前の事だわ。
私は、大きな溜息を一つ吐く。
今日はやっぱりついていない。
いつもならこんな話になる前に、さっさと話を済ませて逃げるようにその場を立ち去るのに、
あの不良教師への苛立ちのせいで、油断してしまったのかもしれない。
もう止めよう。
考えるな。
私は勉強だけに、集中するんだ。



