先生が言い終わらない内に、私は口を開く。



「やりたい事なんてありません。親がそうしろと言ったので」



「え?」



先生は、目を見開いて私の言葉をもう一度確認する。


「親御さんが?」



「はい。親にその大学にしろと言われました。だから、私はそうしたまでです」


峰山先生は、少し困った顔で瞳を揺らす。


「…生田は、この大学に行きたいと思うの?」


「……」



先生は、何が言いたいのだろう?


私がどう答えれば期待通りなのか…。


先生の意味深な問いに、私は首を傾げた。



「私が行きたいとか、行きたくないとか、考えた事はないです。
ただ、そうすべきだとは思います」


「それは、親御さんがこの大学にしろと言ったから?」


「はい。親の金で学ばせてもらうんです。当然では?」



先生は、一瞬眉根を寄せると、少し間を置いてから「…そっか」と言う。


それから、私の背中を軽く叩いて、


「無理はするなよ!」


と言って、背を向けて行ってしまった。