聞くだけで体が震える…。
利樹さんは隣で相変わらずケームを無言でしてる。


「ん?誰かいるの?」

「あ…高校の友達が来てて…」

「ふーん、好きな人?」

得意げに笑うのがこの人はよくあることで
昔と変わらない。


「いえ…」

「じゃあさ、俺の名前呼んでよ。あの頃みたいに」

背筋が凍った。
嫌いな名前をなんで言わなきゃならないのか。



「あ…あの…今はちょっと…」

「なんで言えないの?俺のことに逆と…」

「ごめんなさい…」

私はやはり幸せにはなれないのかもしれない。
栞からは逃げれないのかも。


利樹さんのそばにいる資格だって
こうやって隣にいる資格すら私にはないのかもしれない。


所詮、私は栞の犬なのかもしれない。