溺れる恋は藁をも掴む

 ーー映画を観終わってーー

 「ご飯でも食べようか?」
と誠治さんに誘われた。

 勿論、YES!!

 『時間早いけど居酒屋に行く?』と誘われた。

 「はい!」と、はしゃいだ返事になる。

 駅に近い大衆居酒屋に入り、向かい合わせの席で生ビールで乾杯!

 おつまみにチーズ揚げやお刺身、お好み焼きなどを頼んだ。

 暫し、さっき観た映画の話で盛り上がった。

 「面白いっていうか……
迫力あったね!」

 「そうですね。
映像は物凄く綺麗でした。

 でも、私は中谷宗馬の小説の世界の、《薔薇の咲く肌》がやっぱり好きです。
 文字からその場面を想像するのが好きなんです…
 時に映像にしちゃうと、その世界が崩れてしまって台無しにしますが、今日の映画は良かったです!!
頭のイメージが崩れなくて…」

 「へぇー華ちゃんはそんな顔もするんだね!」

 「えっ?そんな顔?って………
ーーどんな顔ですか?」

 「うーんとねぇ……
好きなものを語る華ちゃんは、ハキハキしていてイキイキしてるっていうか………
 う〜ん……あんまり上手く言えないけど、楽しそうな表情が、聞いてるこっちも楽しくさせるみたいな?」

「あっ…私って……
いつも拗ねキャラになってますもんね……」

「あ、いや、そういう意味じゃなく、誰にだって探られたくない部分はあるけど、華ちゃんはそういう部分、弄られちゃうでしょ?

 そういう時の華ちゃんは、悲しい顔を隠すように笑うんだ。
 
 強がって自分を守ろうとして、それでも脆くてさ……

 女の子はね、そんなに強がらなくていいんだよっ言ってあげたくなる……」


 「強がらなきゃ、やってらんない事、多めに経験してまーす!」

 なんて、戯けて言ってみた。


 しんみりしたくないから………
折角のデートだもん!