溺れる恋は藁をも掴む

 口惜しみながら、グラスのアイスティーを飲んでも、いつかグラスは空っぽになる。
グラスの底の氷も溶け始めていた。
その氷をそっと眺めていた。

 「今日は本当に有難うね!」
誠治さんがそう言えば、デートは終わりを迎える……


 「お茶は私がご馳走します!」

 『いいよ』と言う誠治さん。

 「お昼ごはんご馳走になりましたし、予定のない土曜日を楽しめましたから、ここは私が払います」

 私は伝票を持ちレジにに向かった。

 喫茶店を出ると、誠治さんにお礼を言われた。

 「お茶もご馳走するのが当たり前なんだけどな……」

 そう言って、苦笑いする誠治さん。

 「いえいえ!
どっちもご馳走になるわけにはいきませんよ!」


 そんなやり取りをした後は、並んで駅に向かって歩き出す。

 ーーデートは終わりなんだねーー


 駅近くの有名なショッピングビルの大画面に、近日公開映画の紹介が映し出された。

 『あなたはどこまで人を愛せますか?』
ナレーションが鳴り響く。


 あっ!!これは!!

 私は立ち止まり、その画面に釘付けになった。

 誠治さんも一緒に立ち止まっていた。