溺れる恋は藁をも掴む

 若者に人気のデパートに入った。

 洋服一つにしても、やはり好みがあるから、
誠治さんに、普段はどんな感じなのか聞いてみた。

 「うーん。
ギャルって感じではないかな?
冬は寒いところだからね、お洒落より防寒最優先の暖かいものを選びがちなんだよね……」

 あっ!
そうか…!!

 やっぱり、お洒落は気候も左右するよね…
秋物を着る期間も短いなら、一層、先取りで冬物を選んだ方が実用的かも?

 マフラーやコートなどを提案してみた。

 「あっ!それいいね!!
これから役立つしね」

 誠治さんも賛成してくれたので、店内を歩きながら、早々と冬のコートが飾ってある店を探して、妹さんに似合いそうなものを見て回る。

 お店のディスプレイに、紺色のダッフルコートに淡い空色のマフラーをして、チエックのスカートを履いたマネキンを見つけた。


 ーー可愛らしいトータルコーディネートだったーー

 私はマネキンの前に立ち止まる。

 「これ、誠治さんの妹さんのイメージに合いそう……」

 誠治さんもマネキンが着ている服を見て、
「いいね」と笑った。

 店員さんに見せて貰うと、ダッフルコートは暖かい生地で作ってあり、裏地はマネキンの履いているスカートとお揃いの赤いタータンチエック柄だった。

 値段は、コートだけで19800円。

 予算オーバーかな?
残念と思ったら………

 「このコート下さい」
と誠治さんは店員さんに言う。


 「彼女さんに似合いそうですね!
今朝入ったばかりの、今年一番のお勧めのコートなんですよ」


 えっ!?マジ…………
私達、カップルに見える?


 誠治さんは敢えて否定しなかった。

「プレゼント用にして下さい。
それとマフラーも下さい」

「かしこまりました」

店員は、ダッフルコートとマフラーを手に取り、レジに向かう。


「コートとマフラーは別に包んで下さい」


「承知しました」
店員は微笑み、プレゼント用のラッピングをした。