思えば、真面目な高校生だった俺……
 性的なものに全く興味がなかった訳ではない。

 百合を見ていたら、自分のものにしたくなる衝動に駆られた。

 受験生であり、俺に居場所を与えてくれた百合。

 自分にそう言い聞かせて、やましい気持ちを吹き飛ばした。

 理性も保ってていたんだ。

 夏期講習が無事に終わって、夏休みも残り僅かな時にさ……

 「たまには息抜きしてぇー」
って、百合の前で呟いた。

 「あら、余裕な受験生ですこと」
百合はからかうように笑った。

 「百合さんは息抜きしたくないの?」

 「したーい……けど……」

 「なんだ、百合さんもしたいんじゃん!
 ねぇ、どっか行く?
1日くらいいいじゃん!」

「‥‥‥行きたいかな」


 百合のお店が休みの日曜日に、ディズニーランドに行く事にしたんだ。

 百合は子供みたいにはしゃいだ。

 ディズニーランドに行くのは初めてだったらしい。



 夏休みのディズニーランドは混んでいて、暑かったし、待ち時間半端なくて、面倒臭くもなったけど………

 百合のはしゃぎぶりを見ていたら、そんな事も言えず付き合った。

 汗だくになりながら、スペースマウンテンを並んだよ。

 「キャーキャー」
悲鳴をあげる百合が可愛かった。

 カリブの海賊、ビックサンダーマウンテン、
ジャングルクルーズまで付き合って、ヘトヘトになった。

 最後はホンテッドマンションに行ったんだ。

 「これが最後の乗り物か‥‥
寂しいな」

 「また、来ればいいじゃん」

 「だね‥‥」

 「また、一緒に来ればいいじゃん」

 俺はね、勇気を振り絞って、ホンテッドマンションの薄暗さとムードに任せて、百合にキスしたんだ。



ーーずっと、百合にキスしたかったからーー