「ここの文は……」



小泉先生は黒板に丁寧な字を書きながら、授業を進める。


私はノートを取りながら、ふと夏休みに熱を出した日のことを思い出した。




『迷惑なんて誰も思っちゃいねぇよ。てか、俺たちってそんなに頼りねぇか?』と言ってくれた恭弥。


でも家に帰っておばさんに言われたのは、『迷惑をかけるな』だった。




真逆の言葉を言われて、正反対の気持ちをぶつけられて。


改めて、皆の優しさに気づいた。


私の居場所は、生徒会。温かい皆がいる場所が、私の唯一の“日だまり”。









――体育祭当日。


雲ひとつない快晴の空。まさに体育祭日より!


グラウンドでは、全校生徒が体育祭が始まるのを待っていた。



「楽しみだね、由楽!」



どこにいても目立つ金色のハチマキをつけた蜜が、ワクワクしながら言った。


私は「うん、楽しみっ」と興奮を抑えきれずに言うと、恭弥が私をじっと見てきた。



「お前、ハチマキは?」



金色のハチマキを首からさげている恭弥が私にそう聞いてきて、私は思わず「あっ」と声をこぼす。


付けてくるの忘れてた!机の中にしまったままだ。



「取りに行ってくる」



私はそう言ってこの場を離れ、急いで教室へと向かった。