皆に心配をかけたくない。
「……そうだ」
演技をしよう。
そうすれば私が風邪を引いていることに皆気づかないし、皆に心配をかけることもない。
風邪気味でもちゃんと仕事はできるし、もし休んだら今日しなければいけない私の分の仕事を誰かに回すことになっちゃう。
そんな迷惑、かけられない。
いつもなら顔に出ちゃう考えや気持ち。だけど演技をすれば私の本心を隠せる。
演技がバレたときは、バレたそのときにいい言い訳を考えよう。
私は浅く深呼吸をして、瞼を下ろす。
演じるんだ。いつもの私を。
再び目を開けた瞬間、私は完全に“役”に入り込んだ。さっきまで感じていた頬の熱は冷め、フラフラしていた足はスムーズに動かせる。
よし、大丈夫だ。いつもの、私だ。
生徒会室に入ると、もう皆来ていて仕事に取りかかっていた。
「おはよう」
私が挨拶をすると皆が一斉にこちらを向く。
すると、パソコンを操作していた蜜が私の元まで駆け寄ってきた。
「大丈夫だった!?風邪引いたりしてない!?」
うるうると瞳を揺らしながら、蜜は顔を近づけて言った。



