――ある日の朝、私はいつも通り「行ってきます」と言って玄関の扉を開けた。
「いってらっしゃい」という優しい声は、当たり前のように聞こえてこない。
お父さんとお母さんが天国に行ってしまい一人ぼっちになった私は、お母さんの妹のおばさんの家にお世話になっている。
おばさん夫婦とはあまりうまくいっていないけれど、私は今日も笑顔で家を出た。
「暑くなってきたなぁ……」
照り輝く太陽を眺めながら、学校へ向かう足を止めて呟く。
だんだんと夏らしさが出てきた空を一瞬だけ見つめ、私は再び足を動かし始めた。
学校に着いて教室に入ると、まだ誰ひとりとして来ていなかった。
早すぎたかな……。
入学式の次の日も早めに来ちゃったんだよね。なんだか懐かしいな。
そういえば、裏庭の花壇に咲いていた花たちは元気かな?
見てこようかな。
私はカバンを机に置いて、裏庭へ向かった。
裏庭の花壇って誰が手入れをしたり水やりをしたりしてるんだろう。確か、桜彩学園には園芸部はなかった気がするけど……。