「でも、どうして学園長代理がお父さんのことを……?」


「あら、聞いてない?あたしは双雷の12代目総長、そして神雷の初代総長だったのよ。それと、あたしのことは“望空”でいいからね」





学園長代理……望空さんは片目を瞑ってウインクをしながら言った。


え……!!??

望空さんも不良さんだったの!?




双雷【ソウライ】という族と神亀【ジンキ】という族が合わさって、神雷という族ができたとお父さんに聞いたことがある。


まさか望空さんが最強の族・神雷の伝説の初代総長だったなんて……。




「だから、OBであるあなたのお父様には、可愛がってもらっていたわ」




私のお父さん・風都 誠一郎【カザト セイイチロウ】は、双雷の7代目総長で、“侍【サムライ】”という通り名で知られていた。

不良さんを引退したお父さんは、映画監督として活躍していた。



他人にも自分にも厳しいお父さんは、恐いところもあるが優しいところもあって、私の自慢だった。




「でもまさかあんなことになるなんて……」




望空さんは暗い顔でポツリと呟く。




けれどそんな自慢のお父さんは、お母さんと一緒にドライブしていた際、不運の事故でこの世を去ってしまった。


その事故は私が中学二年生の冬、スキー合宿に行っていたときに起こった。お父さんとお母さんが亡くなったことを知ったのは、合宿が終わって家に帰ってきたときだった。


私の大好きな家族は、私がいなかった間に永遠の眠りについていた。


独りぼっちになったあの瞬間、大泣きしたことを今でも覚えている。



とても寒くて苦しい時間が、私の心を引き裂いていくようだった。