「おはよう、由楽」



朝、教室に入ると蜜が私に挨拶をしてくれた。



「蜜、おはよ」


「……あれ?由楽の頬腫れてない?大丈夫??」


「え?そ、そんなことないよ!」



挨拶を返した私の顔をまじまじと見ながら蜜が聞いてきた。


ドキッとした私は、毛先を指でいじりながらそう言ってごまかした。


蜜、鋭いなぁ。危ない、危ない。




皆にバレてしまったら、おばさんに迷惑がかかる。……それだけは避けなくちゃ。


おばさんに迷惑や心配なんてかけたりしたら、どんな目に遭わされるかわからない。






そして、授業が始まった。


一時間目は一之江先生の数学。


一之江先生は説明をしながら、黒板に公式を書いていく。


私はノートを開いて写そうとするが、ちょっと動かしただけで痛みが走るせいで手に力が入らない。


昨日何度もお腹や背中を蹴られ、二の腕には火のついたタバコを当てられ、もう体はボロボロだった。



おばさんは私の苦しそうな表情が好きならしく、私が「痛い!」「やめて!」と泣き叫ぶと、ニンマリと不気味に笑ってさらに激しく私を虐める。


そんなおばさんの悪魔のような笑みが脳裏を過ぎり、怖くなって咄嗟に目を瞑った。