「君はなぜ、僕をここに連れてきたんだい?」
「え?」
「意思を伝えるためと言っていたが、それなら見合い会場で伝えてもよかったはずだ。わざわざ僕たちをここに呼んだのは、他に理由があるんじゃないのかい?」
初めて口を開いた有栖川財閥の社長さんは、優しいその目を細めて言った。
他の理由……?
「今の俺には命に代えても守りたいものがあります。だからまだ、雅財閥を継ぐことなんて考えられません」
岳斗は有栖川財閥の社長さんから私たちへと目を向けた。
岳斗の目を見て、すぐわかった。
私たちにとって岳斗が必要不可欠な存在なように、岳斗もまた私たちを大事に思ってくれているということが。
「いつか俺がもっと強くなって、雅財閥も仲間も全部守れるようになる日まで、俺は……」
「そうか」
岳斗の言葉を最後まで聞く前に、有栖川財閥の社長さんは穏やかに微笑んでそう呟いた。
「ここに連れてきたのは、君の覚悟を見せるためだったんだね」
温かな笑顔を浮かべた有栖川財閥の社長さんはそう言うと、岳斗のおばあさんの方へと顔を向けた。
「雅財閥の未来の社長の提案を受け入れましょう」
それってつまり……岳斗の熱意のこもった思いが伝わったってこと?
岳斗は、まだ私たちと一緒にここにいられるの?