「俺は転校もしないし、総長もやめねぇ」


「何を言っているんです!あなたは雅財閥の人間なんですよ!?」


「あぁ、そうだ。俺は雅財閥の人間だ」




岳斗の瞳が、今までとは変わっていた。


何もかもを受け止めるような澄んだその瞳は、まるで百獣の王のような勇ましさがあり、その中に真っ直ぐで優しい強い輝きがあった。


岳斗は岳斗のおばあさんからグレーのスーツを着ているダンディな男の人へと視線を移した。




「この度はご足労をお掛け致しまして、申し訳ありません」




岳斗は深く頭を下げて、グレーのスーツを着ているダンディな男の人にそう言った。


礼儀正しい岳斗を目の当たりにした岳斗のおばあさんは、目を見開いている。




「ここに呼んだのは、見合いをしない意思を伝えるためです。そして、見合いを破談にさせた俺が言うことではありませんが、雅財閥と有栖川財閥の合併は破棄しないでもらいたいんです」




岳斗の言葉に、岳斗のおばあさんは驚きを隠せない様子だった。


グレーのスーツを着ているダンディな男の人って、もしかして有栖川財閥の社長さん!?


有栖川財閥の社長さんは、黙ったまま何も言わなかった。




「わがままを言っているのはわかります。だけど……どうかお願いします!!」




岳斗はもう一度頭を下げて、有栖川財閥の社長さんに頼み込んだ。


岳斗の真剣な姿を見た私たちも一緒に頭を下げた。