「岳斗……」
一番岳斗を慕っていた蜜が、弱々しく呟く。
蜜の潤んだ濃い青の瞳からは、今にも涙がこぼれ落ちてきそうだった。
「泣きべそかいてんじゃねぇよ」
「だって……っ」
「泣いたって、岳斗が戻ってくるわけじゃねぇだろ」
今日の二人の口喧嘩には、いつものうるさいくらいの元気はなかった。
岳斗がいない。ただそれだけのはずなのに、心には大きく穴が空いてしまったかのような感覚になる。
それほど岳斗は皆にとって必要不可欠な存在なんだ。
「……このままじゃダメだ」
呟いた私の声に、皆が反応してこちらを向く。
私たちみたいな子どもが大財閥に何かできるとは思ってない。何の権力も持たない私たちが財閥の人間の決めたことを覆すことなんてできないのかもしれない。
そんなことは、十分わかっている。
それでも、私は立ち上がった。
こんな気持ちのままじゃ、いつまで経っても変わらない。
立ち向かっていかなくちゃ。



