いつもは何があっても動じない岳斗だが、壊れたネックレスを見ている岳斗はなんだか落ち着かない様子だった。




「そのネックレス……大事な物なの?」




そういえば、岳斗はいつもその十字架のネックレスをつけている。


そんな暗い顔をしている岳斗は初めて見た。


そのネックレスは、岳斗にとって宝物なのかな?





「“侍”にもらったんだ」


「え?お父さんに?」





岳斗の言葉を聞いて、私だけじゃなくその場にいた皆が目を見開いた。



「……本当だ。“侍”って彫られてる」



ネックレスを直していた利央が、十字架のパーツを見てそう言った。


十字架の裏面に掘られた“侍”の文字。それは見覚えのある、達筆だったお父さんの字だった。




「いつもらったんだよ」


「中1のとき、不良に絡まれてるところを“侍”に助けてもらったんだ。そのときに、『強くなれよ』って言って首にかけてくれたんだ」




恭弥がそう尋ねると、岳斗はネックレスをもらったときのことを思い出すように目を閉じながら話してくれた。


そんなことがあったんだ……。


まさかお父さんと岳斗が前に会っていたなんて、驚いた。