「ちょいちょい桜。桜は、元々可愛いんだから、そんなにバッチリしなくていいのよ。

ほら、私がとびっきりの大人っぽい可愛さを演出してあげるから!」


顔洗ってきな、とお姉ちゃんに背中を押されて洗面所に向かう。


お姉ちゃん、ほんとに優しい…。

うぅ、がんばろうっと!



「お姉ちゃん落としてきたよ」


「よしっ、そこ座って」


お姉ちゃんの勉強机の椅子に座ると、お姉ちゃんによるメイク講座が始まる。


「…そんでね、ここはこう丸く…。んで、眉は…」


「ちょっと桜っ、そんなに目開けなくていいから!」


ああだこうだと、色々言われながら始まって30分過ぎたころ。


「完成っ」


と嬉しそうなお姉ちゃんの声が聞こえた。


あたしは閉じていた目を開け、差し出された手鏡をおそるおそる見た。


「…!っえ、さっきと全然ちがう…」


鏡に映るあたしは、自分で言うのは変だけど…、可愛く見えた。


自分でしたメイクより、こっちのほうが自分にあっているというのがわかる。


「可愛いよ桜~~、さすが私の妹!」