その時、ぐいっと肩を引かれてなにかにもたれかかった。



「…芹沢先輩。桜に何か用ですか」


この声は、海希くん?

ってことは、海希くんの胸に…


「まぁ、用だね」


先輩は少しバカにしたように、海希くんを見た。


なんかさっきと雰囲気が違う。


海希くんを振り返ると、睨むような目で先輩を見据えている。


怒ってる?

二人とも、どうしたんだろう。


「桜、行こう。スプレー貸してくれるんだよな」


「え、あっ、うん。先輩失礼します」


海希くんに手をぐいぐい引かれて、下駄箱に向かっていく。


転ばないように少し駆け足でついていく。


下駄箱につくと、海希くんが振り返った。


「桜、アイツと知り合いなの?」


「知り合い…なのかな」


友達…ではないからそうかも。


「近づかないほうがいいよ、アイツ。ただの女好きだから。性格悪いし」


いつも優しい海希くんが、1トーン低い暗い声で言う。


先輩と、なにかあったのかな。


なんか、すごく嫌っているように見える。