恋は人を変えるという(短編集)





 少し時は過ぎて、初秋。

 空港まで中谷さんを見送りに行った、その夜。彼女がバッグの中から透明のケースを取り出し、テーブルの上に置いた。

 それは、中谷さんに贈るため、ここ数ヶ月彼女たちが作っていた自主制作のミニアルバムだった。

「約束だったので、どうぞ」

 照れくさそうな顔で、彼女が言った。

 お礼を言って改めてケースに目を落とす。ジャケットは、窓辺に花とてるてる坊主、その向こうに虹がかかっているという手描きの絵だった。
 ケースを開けてみると、ちゃんと歌詞カードまで入っている。CDをパソコンに入れ再生しつつ歌詞カードを開くと、曲名のすぐ下に「作詞・崎田邑子」の文字。思わずにやけてしまうと、それに気付いた彼女がぺしんと俺の腕をたたいた。

 パソコンから流れてくるのは、疾走感のある明るい曲。次は穏やかな曲、旅立ちの曲、穏やかな曲。そして最後に、一曲目とは違う明るい曲。音楽のことは詳しくないけれど、この全てを彼女たちが作ったのだと思うと、やたらと感動してしまった。
 彼女が書いた詞は、どれもこれも綺麗で優しい。彼女らしい詞だと思った。

 曲を聴きながら、彼女が「このアルバムは八枚しか作らなかったんです」と説明してくれた。
 中谷さんと吉野くんと彼女は勿論、バンドメンバーのふたり、コーラスで参加した矢田さんという子、それから吉野くんの彼女と俺の分。

 身内の贔屓目かもしれないが、この世に八枚しかないというのが勿体ないくらい、良いミニアルバムだった。


「また集まって作ればいいのに」

 言うと彼女は首を横に振り「大変だったのでもういいです」と。初めての作詞は想像以上に大変だったらしい。


「でも、久しぶりに昔話をするのもいいかもしれないですね」

「高校時代の話? それは聞きたいなあ」

「じゃあ今度、手芸部に入った頃の話をしますね。卒業アルバムでも見ながら。アルバム笑えますよ。わたしたち三人がぬいぐるみ持ってて」


 彼女のことを知っていく度、嬉しくなって頬が緩む。

 やっぱり今日も、俺は彼女のことばかり。







(了)