「らっしゃいませー」

なんだその微妙な八百屋感は、と心の中でとっさにつっこみが出てしまった。

このコンビニのバイトさんたちは基本的にゆるゆるとしている。客層もだいたい近所のいつものメンバーって感じだから、お仕事がえりですか、おつかれでーすとか、あんた最近痩せたわねぇとか、ばあちゃん荷物もつよー。なんて会話が客とバイトさんの間で普通に発生するのだ。

こういうのほほんとした光景が似合うこの町が好きで、会社からはすこし離れてはいるけれど、やっぱりここにして良かったと思う。

今日はあんまりおなかもすいてないし、少しのつまみと缶ビールを数本、あとワイン一本と…とりあえず目につくお酒はかごに入れていく。

レジに並んで会計を聞いて、さすがにちょっとやばいなと思ったけれど、まぁいいんだ。今日は普通の日じゃないんだし。財布からお札を何枚か引き抜いて渡す。
目の前に立つ、青色のエプロンのレジのお兄さんが一瞬動きを止めた。
やばい、お兄さんが戸惑うくらい私はひどい顔をしているんだろうか。
言葉は交わしたことはなくても、もうほとんど顔見知りみたいなものなので、さんざんな有様をこれ以上見られないように俯いたまま会計を済ませて、足早に店を出た。