女神は蜘蛛の巣で踊る



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 後日談がある。


 事件の全てを聞いて、調査会社に歌手とそのマネージャーが大量のお土産を持ってお礼にきたらしい。その中には彼女のCDが何枚か入っていて、珍しく飯田さんがそれを欲しいと言ったとか。彼が仕事のこと以外で口にするのが余りにも珍しく、全員が同時に頷いて「持って帰れ」と言ったらしい。

 桑谷夫妻にもお礼を、と年末のコンサートのチケットをくれたので、私はまた夫をデートをするつもりでいる。

 それから、顔がボロボロになったままの桑谷さんが翌日百貨店に出勤すると、会う人会う人の全員が『奥さんとバトったんですか!?』と嬉しそうに聞いたとか。その話はデパ地下にまで瞬く間に広がり、その次の日に出勤した私をやたらと色んな人が好奇の目で見詰めてきたので、私は一日中弁解に走るはめになったのだ。

 あれは私の仕業じゃありません~!なんて、どうして私が言わなければならないのだ。自分で言え、自分で!

 全く、一体どういう夫婦だと思われてるのかしらね?!私が夜にそう発言すると、彼は苦笑して両手を上げた。

 夫に暴力を奮う妻だ、と思われてるんだろうな、って。

 ムカついた私は、じろりと睨んで家事を放棄することを宣言した。暴力は奮わないが、放棄は喜んでしてやる。

 そんなわけで、夫は今も、テレビの前で洗濯物を畳んでいる。




・「女神は蜘蛛の巣で踊る」終わり