「とにかく、ご苦労様でした。おかげさんでハッピーエンドよね、皆」
私がニコニコとそう言うと、彼は、うん?と首を捻る。
「ハッピーエンド?皆が?」
「・・・何よ」
一体誰が不幸だというのだ。私は逃げる雅坊をとっつかまえて自分に引き寄せる夫をじっと見た。
すると桑谷さんは器用に片眉を上げて言ったのだ。
「俺は、君に巻き込まれて大変な思いをし、仕事に支障をきたし、睡眠不足でボロボロになって、英男に金も払う上にデカい借りを作るはめになったんだぞ」
「うん」
「なのに、ご苦労様、の言葉だけ?」
私は下から彼を掬い上げるように見た。朝日の中で、実に痛そうな外見をした夫はにやりと笑って私を見下ろしている。
「・・・望みは何?」
彼は更に嬉しそうに、口の左端を持ち上げた。
「バニーガールの格好をして、俺に奉仕してくれ」
──────は?
一瞬口をぽかーんとあけてしまった。夫はニヤニヤしたままでまだ暴れる雅坊を拉致している。ぎゃあぎゃあ喚く息子を助けることには考えが及ばなかった。それほどに、私は呆気に取られていた。
「・・・バニーガール?って、あの兎の耳つけるやつ?」
「そうそう、ぴっちりしたミニスーツに尻尾もつけるやつ」
「それ、誰が着るの?」
「君がだろう。俺が着てどうする」



