英男が今朝一番に、沢森という男にコンタクトを取った。全部判っている。蜘蛛はこちらが捕らえている。歌手一人を諦めるなら、煩雑な出来事から解放してやれるが、どうする?そう聞いたんだ。
蜘蛛に関してはこちらは立件できるが、沢森という男には法律では手を出せない。だけど、今回の事件を知っている人間がわんさかいる、中には刑事もいる、というのはこれからの事業展開にも面倒臭いことが付きまとうのがヤツには判った。
沢森は蜘蛛を売った。北川ミレイには近づかない、金の回収はしない、それから、そんな男は知らない。そう言って電話を切ったんだ。
「・・・と、いう事は?」
夫は朝日の中、にっこりと大きく笑った。
「歌手は無事、マネージャーは借金ゼロ、蜘蛛野郎はご用となる」
───────おおおお~っ!!!
「わお!」
私は今度は両手で盛大に拍手をした。その音で雅坊がおきてしまったくらいに、大きく。
凄い凄い、素晴らしいじゃないの!?ちゃああ~んと、世の中の役には立ったってことでしょ!それ。
様々に糸を巡らせて目的に近づき、罠にかける。そう豪語した何でも屋・蜘蛛は、結局は自分の糸に絡まったのだ。
いや、違うか。
私はボロボロの外見で起きてきた息子を抱き上げる夫を見て笑う。顔が酷いことになっていて、息子は父が判らなかったらしい。顔をみるなり泣き叫び、体をよじって逃げている。
糸なんてかけたって、関係ない。そう言いきれるこの人に捕まっちゃったんだから、無理って話よね───────



