女神は蜘蛛の巣で踊る



 眠らせた歌手の北川ミレイを海外の沢森の別荘へと送る。そこで無理やり結婚を済ませ、マネージャーの新井は金目当てで所属歌手を売った男として日本で逮捕される、そういう予定だったらしい。

 金に困ったマネージャーが金目当てで担当歌手の海外渡航権を沢森に売り、そのために本人をパーティー会場で眠らせる。そういう筋書きをして、実行犯の蜘蛛があの日パーティーで決行した。

 二人を眠らせ、歌手だけを運び去る。歌手が消えて慌てた出版社が警察に電話をする。残された新井は事情を聞かれるだろう。

 新井本人が目覚めたあとにそんなことは知らないと言っても、状況証拠が山ほど揃っている状態だったんだ。新井のコートからは使用された跡のある睡眠薬の瓶、借金の借用書。契約更新をしたばかりの北川ミレイの契約書は、新井も入ることの出来る事務所に保管され、それはつい最近盗み出されている。新井の口座には借金返済に使える多額の振込み。

 警察は、間違いなく新井を逮捕するはずだ。そう考えた。

「・・・で、私達がその邪魔をした」

 桑谷さんはひゅっと片眉を上げる。それは反対声明をあらわしているようだった。

「・・・君が、に訂正しないか?俺は反対したはずだな、あの夜も、それからも」

「でも一緒にやったでしょ?蜘蛛を殴ったし、追いかけたし、写真までとったのはあなた」

「─────」

 彼が低く唸った。

 だけどカップを揺らして続きを催促する私に、大きなため息をついてみせて話を再開した。