彼は自分も食べながら話す。時折痛そうに、口の横を舐めていた。
「全部判ったぞ。蜘蛛の雇い主、それから奴らの目的も」
わお!私は声を出さずに指先で拍手した。まさか、この数時間でそこまで判るとは思ってなかったのだ。
凄いじゃん!だって昨日は私が帰宅した時点ですでに夜の10時すぎだったのだ。それから全部が判ったってこと?それって何時に帰ってきたの?そう思った。
とにかく、昨日の夕方、雅坊を連れて保育園から帰ったあと、メールで激しく夫とやりあったのだった。
つまり、私が蜘蛛のおとりになることについて、彼は反対したのだ。「何考えてるんだ!?」って文字が携帯の画面の中で躍っていた。だけど仕方ないでしょ?と私は返したのだ。だって、あなたが食堂で言ったのは私と雅があなたの実家にいく、ということなんだから、って。
狙い通りに蜘蛛が私達のところにくるなら、自動的に私は囮になるはずだ。
それで実は武道の心得があるらしい飯田さんを護衛につける、という話になったのだった。それでも夫は相当ごねて、その挙句しぶしぶという形で了解を出し、その上で彼の仕事が終わる9時までは家を出ない、という約束を私に強要したのだった。
「まず昨日の話からだな。まりが家に帰って、それからだ」
俺と飯田に囲まれて、だけど蜘蛛は逃げるつもりでいたようだった。勿論何でも屋としてのプライドもあっただろうけれど、まあ簡単にいうと俺達はまだ舐められていたんだな。格闘技ではきっとヤツの方が上だったはずだ。あっちにもこっちにもそれが判ってた。だから、ヤツは逃げられるとタカをくくっていたんだろう。
だけど、こちらには人手と文明の利器があったんだ。



