女神は蜘蛛の巣で踊る



 私はそれをしばらく笑顔で見送って、それからふん、と鼻を鳴らした。

 ────────宣戦布告かよ。バカ野郎め。

 あたしは性質の悪い詐欺師で殺人犯だった男とも生活を共にしたことがあるのよ!威張れないけど。あんたなんかに───────・・・

「手出しは、させないんだから」

 呟きは、口の中だけにしておいた。

 桑谷さんの言う通り、やはり早朝にあいつは我が家を見張っていたらしい。だけど雅坊を迎えに行く彼にまかれてしまって、こちらに来た、言葉通りにとればそういうことなんだろう。

 依頼主から待ったがあった?だから私達にやり返す暇もあるってわけ?

 ムカついたのでケースを蹴っ飛ばしそうになった。

 落ち着くのよ、まり。とにかく必要なのは───────────

 腕時計を確認した。

 ・・・作戦会議、だわ。

 もうそろそろ福田店長が戻ってくるはず。そうしたら品だしに倉庫へいって、それから早い目に休憩を貰おう。運よく時間があえば、店員食堂で夫に会えるはず──────────

 その企みは成功した。

 つまり、いつもより早めの休憩に出ることで、滅多に会えなくなった3階所属の夫に店員食堂で会うことが出来たのだ。

 元々デパ地下の鮮魚売り場責任者だった彼は、滅多に最上階にある店員食堂へはこなかったのだが、3階へ異動になってからは毎日のようにここを利用している。ただし、私とは基本的に使用時間がずれているので会うことは少ない。