ケースを挟んだ前に立って、蜘蛛野郎が小さな声でぼそっと言った。
「女は家に戻ってた。だけど警察に行ったらしくて依頼主から待つように指示がきたよ。あんたらが入れ知恵したんだろうな・・・。全く、腹がたつよ」
「リボンなどはいかがでしょうか?」
ヤツは手を簡単に振ったので、リボンはつけないことにする。ついでにそのまま床に落として中身を割ってやろうかと考えたけれど、子供っぽいと思ってやめることにした。
「だから」
蜘蛛野郎が身を乗り出した。傍目には、商品について店員と相談している客にしか見えないに違いない。
「桑谷家のチビと交換しないか?あんた達の宝物であるチビ助を狙うのをやめるから、あんた達も他人事からすっきり手を引いてくれ」
グシャ。
手に持った菓子の袋を包装したままでガラスケースの角へと強く押し付けて、私はにっこりと笑う。
「百貨店のカードはお持ちでいらっしゃいますか?」
「・・・もってない」
蜘蛛野郎は私がたった今中身を破壊したお菓子袋を凝視している。私はニコニコと笑顔のままでそれをビニール袋へといれ、レジを打った。
「お待たせいたしました。会計させて頂きます」
「・・・それに、金払えって?」
「何か不都合ございましたか?」
目を見開いて、申し訳なさそうな顔を作る。蜘蛛男は少しの間呆れたようにみていたけれど、やがて苦笑のようなものを落として袋を取った。
「あんた、本当に面白い女だな」
お金をつり銭なしのきっちりした金額をおいて、ヤツは歩き出す。



