夫である桑谷彰人がまだほんの若者だったころ、子供の頃に出会って以来付き合いを続けてきた、本人達曰く腐れ縁である滝本英男氏と二人で調査会社を設立した。経営の主な業務は滝本さん、現場で手配、調査、場合によっては乱闘などをしていたのは桑谷さん、らしい。
そしてその頃、色んなツテや出会いから使えると思ったらしい人々を、桑谷さんは社員として会社に引き込んだ。
その人達の3人のうち2人が、今、私の目の前にいる。
「お久しぶりです、奥さん~!!」
そういって叫ぶのは誉田さん。今は滝本さんが一人でやっている調査会社の若手社員だ。ラガーマンのような体型で声がとにかく大きい。折角静かに滑り込むようにこの部屋に入ってきたのに、これではパーティー会場の人にばれてしまうではないの?と思うほどの声だった。
「誉田、うるさい」
滝本さんと桑谷さんの声が重なって、同時に誉田さんの頭を飯田さんが片手で叩いた。うおっ!と叫ぶ誉田さん。その全てを見てしまった私はどうしようかと一瞬悩んで、にへら、と笑っておいた。
「事務所に運ぶのでいいんですか?」
早速眠り込んでいるマネージャーの肩の下に片手をいれながら、飯田さんが滝本さんに聞く。40代半ばだろうこの人は、調査会社一の寡黙な働き者だと夫に聞いたことがある。率先して現場にでるためにあまり姿を見たことがない。彼は部屋に入ってきたときに静かに目礼したのみで、今初めて声を聞いたくらいだった。



