今だって、滝本さんに電話したのが私であったなら、きっと返答は『どんなご用ですか?』だったはずだ。それにきっとこんばんはの挨拶もあったはず。それが夫であるなら『ああ!?』になるわけで・・・。
それは2重人格なのかと思ってしまうほどの変化ではあったけれど、お互いに嫌がりながらも関係を続けているところをみると、二人がお互いのことを認め、必要としていることは確からしい。
何と言うか、実に面倒くさい間柄なのだ。
そして今、都心の中規模のホテルでのパーティーの夜、この部屋の中に眠らされた人間が二人。理由はちっとも判らないけれど、このままにはしておけない。そう考えた夫は滝本さんに協力を願うつもりらしい。
だけど、彼の言葉に対する滝本さんの返答は、これまたシンプルだった。
『くたばりやがれ』
うん、見事だ。滝本さんの姿勢というのは、基本的にまったくブレがない。心の中でそう感心している私の前で、夫は深い深いため息をついた。
「・・・英男」
『はっきりと犯罪なんだろ?さっさとポリに電話しろよ。その為に警察ってもんがあるんだろうが』
滝本さんの声は私にまで届いている。夫はちらりと私を見た。
「────まり。俺も実際、それが最善だと思うんだが」
私はその場で首をぶんぶん振ってみせる。
彼らの意見はしごくもっともな言い様だとは判っている。私だって、今晩はもう十分に暴れたんだしそろそろ帰ってビールでも飲んで寝てしまいたい。



