「・・・あ・・?」
「ちょ・・・ぐるぐるするん、だ、けど・・・」
さっきまで笑いながらお互いに労い合っていた二人が、フラフラと椅子の上にもたれかかっていく。ドサリと音がして、マネージャーの新井さんは完全に床の上に崩れ落ちた。
歌手の北川さんは細くほとんど閉じかけている瞳を何とかこじ開けて、震える手をお茶が入ったペットボトルに伸ばして─────────そのままで力を失った。
「おい!」
どこからか桑谷さんが飛び出してきて、マネージャーを乱暴に上向けてよびかける。私も急いで出て行き、走ろうとしてヒールがカーペットにひっかかった。
わお!危ない!
危うく転びそうになるのをヒールを脱ぎ捨てることで回避して、何とか無理やりバランスを保った。
“一体何事!?”が何度目なのよ!?もう!バタバタと駆け寄ると、歌手はどうやら眠り込んでいるらしかった。小さいけれど呼吸が聞こえるし、体もゆっくり上下している。
「お茶だ」
桑谷さんの低い声が聞こえる。そうだ、彼らはこれを飲んだ瞬間からこうなってしまったのだった。私は机の上のペットボトルに手を伸ばす。
その時、ドアが開いた。
夫婦で同時に入口を振り返ると、さっき逃げていった蜘蛛男が口を開けたマヌケな顔で突っ立っていた。
ヤツは両目をすばやく動かして部屋の中を見回すと、踵を返そうとする。
だけど、その時にはすでに私は走り出していた。殆ど考えもせずに、体が勝手に動き出した感じだった。走りながらようやく頭に言葉が浮かぶ。戻ってきたわね、蜘蛛野郎!今度こそ私が──────・・・



