「変える?何をですか?」

「売り場を。カーテンの見せ方を180度変えたいなぁって思って」

「…………えーと、そうなりますと来月の休業日に総替えということですね。あと2週間ほどありますのでその間に企画書を作って部長から企画部に持ちかけて、店舗インテリア部とミーティングしないといけないので」


ジャケットの内ポケットからミニサイズの手帳を出して、来月の休業日の確認をおこなう。
すると私の言葉を遮るように、金子がつぶやいた。


「面倒だから全部すっ飛ばして今やろう」


バサッとスーツの上着を私に押し付けて、淡い水色のワイシャツ姿になった金子がどこからか脚立を持ってくる。


「い、今?主任、何を言って……」

「綾川さん、販促部から男手欲しいから連れてきてくれない?あとインカムで販売部で手が空いてる人いたらその人たちも呼び出して」

「無理です!上に怒られます!」

「確認だの承認だのミーティングだの、そんなのやってる暇あったら現場をこまめに変えて売上良くした方が効果あると思うんだよね」


慣れた手つきでレールに吊るされている高級カーテンを次々に外していく金子。
私は呆然として彼の暴挙を眺めていた。


「大幅な変更はきちんと規則に則ってからやらないとダメですよ、クビになりますよ!」

「ならないよ。売れればね」

「売れなかったら?」

「売れるから大丈夫」

「まだ営業時間内ですよ!お客様がいらっしゃいます!」

「だから人手が欲しいの。10人もいらないから呼んできて。そしたら30分で終わるから」


私の意見など聞く耳もない金子は、カーテンを外しながらさらにもうひと注文。


「眩しいから照明も少し落とさないとダメだな。カーテン見上げた時に目がチカチカしたらお客様も苦しいだろうから」

「…………」

「綾川さん?」

「空いてる人、呼んできます」

「お願いね」


もう知るかっ!
金子がクビになろうが左遷されようが、知ったこっちゃない!


半分ヤケクソで金子に従うことにした。