飲み会からの帰り道。
金子と2人で一緒に帰るのは、もはや当然となり、恋人になってからは手を繋ぐようになった。
小さな変化。
だけど、大きな変化。
「今日、うちに泊まる?」
マンションまでの道すがら、彼に誘われて即座にうなずきかけたのを思いとどまる。
もうお互いのマンションはけっこうな頻度で行き来しており、こういうやりとりも増えてきた。
でも、明日はせっかくの休館日。
フェア期間中、金子はろくに休むことも出来ずに出ずっぱりだった。
少しゆっくり休んでほしいという気持ちが先行する。
「今日は、やめておく。明日は休みだし、のんびりして気が済むまで寝てるといいよ。私が泊まりに行ったら疲れちゃうでしょ」
「分かってないなぁ」
不満げに口を尖らせる金子の表情は、明らかにガッカリしている。
いや、私だって一緒にいたいけどさ。
「分かってないって、何が?」
首をかしげると、彼は私を諭すように笑った。
「前にも言っただろ、疲れてるからこそ会いたくなるって。不思議なんだけど、ひとりでいるよりも結子と2人でいる方が心が休まるんだよ。なんていうか、安心する」
「………………そうかな」
「結子は?俺といると疲れる?」
少しだけ不安になったのか、金子の心配そうな瞳が私をとらえる。
そういう目をされると、こっちまで切なくなってしまう。
そして結果、素直に気持ちを口にしてしまう。
「ううん。一緒にいると…………嬉しくなる」
こんなこと言うキャラじゃなかったんだけどな。
素直な金子に影響されてしまったらしい。



