斯くして、今野くんの活躍(と言えるかどうかは疑わしいが)どうにかこうにか金子のお見合い話は流れていき、平穏が訪れた。
秋の新生活フェアは前年度の売上を上回り、こまめに現場に出向いてお客様の動向を探り、その都度商品へのアプローチを変えて工夫を凝らした販促部の株が上がった。
それもこれも、金子のおかげだった。
居酒屋『一鮮千漁』にて、フェアが無事終了したお疲れ様会と題した飲み会を、販促部のみんなで開催していた。
「いや〜、今回のことで社長からも販促部の力は大きかったって太鼓判押してもらってね。みんな本当にありがとう」
すでにほろ酔い気味の酒田部長が、赤ら顔でビールを飲み干す。
グラスが空になると同時に、誰か彼かがまたビールを注ぎに来るというエンドレスな展開である。
「特に金子くん!異動してきてくれて半年で、よくここまで頑張ってくれたねぇ」
「ありがとうございます」
部長のお気に入りになっている金子は、隣の席に座らされて話し相手になっているらしい。
可哀想に……って失礼か。
樹理と私は少し離れたところでお酒を飲み、新鮮なお刺身や天ぷらを堪能していた。
彼女には金子とのことは報告済みで、「そうなるのは時間の問題だと思ってたわよ」と笑われた。
「で?阻止できたの?金子くんのお見合いは」
樹理にコソッと尋ねられて、私は「たぶん……」と自信は少なめにうなずく。



