もはや半泣きに近い状態になりつつある私は、きっとだいぶひどい顔になっていることだろう。
「今野のヤツっ!今野のヤツっ!何も知らないで余計なこと言うんだからっ。もうやだっ」
「大丈夫、大丈夫」
なぜか金子は楽しそうに笑って、取り乱している私を落ち着かせるように優しく抱きしめてくれた。
「逆に俺は今野に感謝したいくらいだね。いつも冷静で真面目な結子が、俺のことでそれだけ揺らいでくれてるんだから」
「優しくされると泣きそうになるからやめて」
「いや泣かないでお願い。どうしたらいいか分からなくなるから」
あはは、と抱きながら笑った彼は、ポンポンと私の頭を撫でながらつぶやいた。
「ついでに言うと、俺は結子以上に嫉妬深い男なので。それだけはよろしくね」
「………………嘘ばっかり」
「嘘じゃないよ。いまだに君と話してる小野寺部長を見ると無性に腹が立つもん」
ビックリして顔を離すと、彼は当然でしょと言いたげな目で私を見ていた。
「ほんと厄介だな、社内に元彼がいるってのは」
「…………でしょ?だから社内恋愛はコリゴリだったのよ。別れたあとが大変」
周りにコソコソとあることないこと噂されるし、勝手に同情されるし、勝手に励まされるし、気を遣われるし。
嫌っていうほど、社内恋愛の大変さは知っている。



