私の幸せボケがいつまでも続くかと思ったら大間違いだった。
なにしろ、秋の新生活フェアが始まったからだ。


当然のように毎日売上を事細かにチェックし、目標売上に到達していないものはディスプレイの変更や販促物の差し替え、日毎に変わる目玉商品の設定など、やることは盛りだくさんだった。


そういった細かい仕事の煽りを受けるのが、販売部と販促部なわけで。
販促部のみんなはほとんど休みなく1週間ほど通しで働き詰めた。


もちろん、私も金子も例外ではなく。
甘い恋人生活を送るどころか、バタバタな日々を送ることとなった。


「綾川さん…………俺、もうマジでそろそろ死にそうっす」


朝イチで専務から目玉商品の変更を言い渡され、打ち出すはずだったポップを急きょ作り直すことになった。
必死にパソコンで作成する私の横で、ぐったりしたように今野くんが目の下にクマを作ってデスクに突っ伏す。


「私だって寝不足なんだからっ。グダグダ言ってないで現場に行って販売部の手伝いしてきなさいよ!」

「もう主任が行っちゃいましたよ〜」

「なんで止めないの!主任がいないと承認もらえないじゃない」

「ファブリックにテコ入れするって言ってましたよ」

「また仕事が増える予感がする……」


今野くんに聞かなきゃ良かった。
ファブリックにテコ入れって担当は私なんだから、完全にまた何か違う仕事を要求される。
恋人になったからと言って、金子はそのへんは容赦してくれない。


「とりあえず主任が帰ってくるまでにこれを終わらせる!」


連日の残業でメンタルにダメージを受けている(ようには見えないけど)今野くんは放置し、できる限りの集中力と知識で新しいポップを作成した。