地下鉄を降りて、マンションまで歩く。
すっかり夜に溶け込んだ道を、これといった会話もなく金子と歩いていた。
5年前はあんなに嫌なヤツと思っていたのに、きちんと中身を知ったらとても優しくて真面目で。
きっと大体の人は彼のことをこう言うだろう。
「いい人だね」と。
一見笑わないとちょっと愛想が悪いように見えるけれど、ひとたび笑えばそのいい人感がにじみ出ているような顔になる。
まぁるい笑顔だ。
仕事のことでは饒舌だけど、仕事を離れるとなんとなく口下手な印象を受ける。
それもまた彼のいいところなのかも、と思い始めたあたり、私はけっこうこの人のことが好きなのかも。
抜きん出てかっこいいわけじゃない。
でもそんな見た目なんてものは恋愛においては必要無いのだ。
「ねぇ、綾川さん」
すっかり金子の横顔をガン見していた私は、不意に話しかけられてハッと我に返る。
「あ、うん、なに?」
「ずっと考えてたんだけどさ」
さっきから黙りこくっていたのには、何か理由があるらしい。
彼は長らく寄せていた眉間のシワを解いて、まっすぐに私の目を見てきた。
「婚活パーティー行くの、やめない?」
「……………………え?なんで?」
ポカンと口を開けて目を丸くしていると、金子が続けざまに理由を話してくれた。
「だって、俺が嫌なんだもん」



