社内恋愛の大変さは身に染みて分かってる。
健也とのことで、付き合っていた時だけじゃなく、別れた後もなかなか面倒であるのは実感していた。


仮に、万が一金子とうまくいったとして。
もしもまた別れたら?


学習しない女ってみんなに思われるんじゃないだろうか。


素直になれたらいいのに。


「恋愛出来たらいいなって思ってるの。出来れば、社外の人と。もう社内恋愛はちょっと怖いし」


思っていることとは裏腹な言葉を口にして、金子からは目をそらした。


「健也も結婚するし、私もそろそろ相手を探さないとね。だから婚活しようかなって」


バカバカッ。
私のバカッ。嘘つき。
予防線を張ってしまった。


最後まで残しておいた煮玉子を一口で食べて、スープは残して箸を置く。


金子は一言だけ、


「そっか」


という返事のみをして、なんとも言えない顔でちょっと寂しそうに微笑んでいた。


チクッと胸が痛んだ。