「結子も、次に付き合う人は気兼ねなくなんでも言える人にしないと。小野寺さんみたいにプライド高い人じゃなくて、優しい人がいいと思うよ」

「優しい人ねぇ……」

「優しくて器が大きくて、包容力ある人がいいと思うのよね。自然に甘えさせてくれるような、そういう人」

「そういう人にはたいていすでに彼女がいるのよね」


諦めモードの私は、冷凍食品のひじき煮を口に入れて苦笑いを返した。
「諦めるな!」と樹理の鋭い言葉が飛んでくる。


「いない場合もあるじゃない。ほら、よーく周りを見てごらんなさい」

「もう社内恋愛する気はございませんので」


一瞬頭に金子の顔が思い出されたのは言うまでもなかったけれど、樹理に見透かされているようだったので口をつぐんだ。


社内恋愛したって、別れたあとが大変だということはすでに経験済みだ。
それなら最初から社内の男性は恋愛対象に見るべきではない。


「婚活でもするかなぁ」


ボソッとつぶやいた私の一言に、樹理が過敏に反応した。


「こ、婚活!?結子が婚活!?婚活!?」

「そんなに連呼しなくたって」

「小野寺さんと別れてから彼氏が欲しいなんて全く聞かなかった結子から、そんな前向きな言葉が聞けて嬉しいのよ!」


樹理に言われるまで気づかなかった。


そういえば、確かに大して恋人が欲しいわけではなかったはずなのに。
どうして「婚活」なんて口にしたのか。