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目を開けた瞬間、手に温もりを感じた。
あれ、私、倒れたんだっけ。
じゃあこの手のあたたかさは?
そう思ってるあたたかい左手の方を見ると、大好きな人がいた。
「っ……」
想がこんなに近くにいるのはすごく久しぶりな気がして、一瞬にして目頭があつくなる。
でも、そんなことになっている場合じゃなくて、今はどうすればいいか考えなきゃだ。
どうやったら想と話さなくて済むかを。
「……ん…。美来?」
寝たふりだ。寝たふり!しなきゃ!
とっさにしたあたしの寝たふりがバレないわけないけどするしかない。
そう思ってギュッと目を瞑っていると、唇になにかが触れた。
それがキスって考えつくのには一瞬で。
「っ!!!?」
びっくりしすぎて目を開けてしまった瞬間。
想がニヤッと余裕そうな顔して笑っていた。
笑っているうちに手を離して逃げようと思った私に気づいたのかベッドから起き上がると手を握る力を強めた。
その力にまた驚いて想の顔を見れば、さっきまでの余裕さは消えて辛そうな切ない顔をしていて。
「…なんで、俺を避けんの?俺じゃ何も力になれないの?」
いつもより低くて真剣な声は私の胸に深く届いて、一層辛くなる。
