翌朝、体育館へ行くと、音が聞こえた。


扉を開けて、その音の正体を確認する。



ダムダム、とボールを突く千の姿を見て、笑みがこぼれた。


視界の隅に映る時計は、7時20分を示していた。


ボールを放った千の鋭い視線に、挨拶しにくくなって口を閉ざす。



――シュッ、とゴールを決めたボールが落下する。



3ポイントシュートが決まる確率が、だんだんと上がっていっている気がする。


努力のたまものだ。


やっぱり、千はすごい。



「せ、千、おはよう。シュートすごかっ……」



あと、たった一文字。


なのに、声が消えた。



声をかけた私に一瞬だけ向けられた千の瞳は、すぐに逸らされたからだ。



いつもなら、ちゃんと挨拶を返してくれるのに。


私を見た千の表情がいつになく冷たくて、胸がズキリと痛んだ。