百面相なんかしてないよ。
って、言い返したいのに、声が出ない。
君への「好き」が心にひとつまたひとつ降り積もる度、全身に音が響き渡るんだ。
その音こそがきっと、この“ドキドキ”。
「せ、千……」
「ん?」
無愛想なクール野郎だと思っててごめん。
今、君の印象は上書きされた。
どこが無愛想でクールなんだ。
君は、すごく温かくて優しい人なのに。
勘違いしてた自分がなんだか恥ずかしい。
「す、」
――コツ。
まるでコップから溢れた水のように、こぼれ落ちそうになった想いは、
かすかにどこからか聞こえてきたローファーの靴の音によって、最後の一文字が声になる寸前で喉の奥の方に引っ込んだ。



